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強くて軽い素材「CFRP」の低コスト化

航空機。「」と「次世代輸送系システム設計基盤技術開発プロジェクト」の中間評価報告書には下記のプロジェクトには「バータム法」というのがあります。この内容はわれわれにとっても参考になるので概略を紹介します。大掛かりな冷凍庫や加圧炉などに設備投資が必要なく小規模企業で実現できる工法の一つで、現在ではプリプレグで成形したものとほぼ同等の強度が出るようになりました、と報告されています。

研究開発内容
【プロジェクト】
1.航空機関連(広く産業技術を対象とした研究開発であって航空機関連技術にも稗益するものを含む)
(1)省エネ用炭素繊維複合材技術開発
①概要
航空機、自動車、鉄道、船舶等の輸送機械等における炭素繊維複合材の適用範囲を拡大し、省エネルギーの促進を図るため、先進的な炭素繊維複合材成形技術や、耐雷対策の低コスト化技術等の研究開発・実証を行う。
②技術目標及び達成時期
2013年度までに、従来の方法に比べ低コストであり、曲率の大きな部位の成形も行うことができるVaRTM(バータム)法等の炭素繊維複合材成形技術や、炭素繊維複合材を用いた製品の耐雷性能を低コストで確保する技術の研究開発・実証を行う。
③研究開発期間
2008年度~2013年度

試行錯誤の末に辿りついた「バータム法」

自転車に使われているフレーム素材は、鉄系のクロモリからアルミニウムに銅やマグネシウムなどを加えたアルミ合金の利用が多い。その理由は強さと軽さにある。飛行機も最近ではアルミ合金から更に強くて軽い素材「CFRP」の低コスト化を目指している。飛行機は重たくなると離陸に時間がかるし重たい機体では燃費も悪くなる。軽量化が必要だ。時代が流れ技術が進歩するにつれ、アルミ合金よりさらに軽い素材が注目されるようになる。複合材だ。2つ以上の異なる素材を組み合わせた材料のことで、その多くは、単一素材からなる材料より軽くて強いという特長をもっている。そして、航空機業界で注目されている複合材が炭素繊維複合材(CFRP)である。

CFRPとはプラスチックの中に炭素(カーボン)繊維を入れることで高強度と軽量が両立するので、省燃費の旅客機が生産できるようになってきた。現在運行中の旅客機の10~15%の機体にCFRPが使われる最近開発されたボーイング787は構造重量の50%がCFRPだそうです。旅客機の素材はアルミ合金からCFRPへと急速に移行しているが、CFRPそのものは実は1970年代には既に存在していた。機体への採用が遅れていたのはコストです。CFRPは従来のアルミ合金と比べると1.5~2倍ものコストがかかるため、民間企業にとっては採用しにくい。それでもCFRPが採用されつつあるのは、環境保全や省エネルギーの気運の高まりがあるからです。しかし航空会社とすれば、従来コストが安ければそれに越したことはありません。そこで我々が新たなCFRPを研究・開発するに当たって掲げた目標が、従来のCFRPより20%コストを削減することでした。

CFRPがコスト高になる理由は、その製造方法にある。これまでの製造方法は、まず炭素繊維に溶かした樹脂をまぶして半乾きにする。

このシートをプリプレグと呼ぶ。このプリプレグを30~40枚、箇所によっては100枚ほど重ねる。加工前のプリプレグは空気中に出すと3日ほどで使えなくなってしまうため、-10~-20℃の冷凍庫で保管する必要がある。プリプレグを積み重ねた後は、オートクレーブと呼ばれる加圧炉で120~180℃まで加熱し、4~6気圧の圧力をかけて成形するという工程を経る。
「この方法は組立工数が多いだけでなく、冷凍庫や加圧炉などに莫大な設備投資が必要となり、コスト高につながっていました。そこで、冷蔵庫や加圧炉を使わないで成形できる方法はないかと試行錯誤の末に辿りついたのが、『バータム法』という製造法です」。

バータム法は、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)のことで、「真空樹脂含浸製造法」となる。
「この製造法は、まず炭素繊維を薄いフィルムで覆い、フィルム内の空気を抜くことによって1気圧程度まで圧縮します。その真空圧を利用して樹脂を呼び込み、比較的低い温度で成形します。この方法ならばプリプレグのような中間素材だけでなく、高価な加圧炉も冷蔵庫も必要ない。つまり製造費を大幅に削減できるメリットがある」しかし、当初のバータム法にはある欠点があった。1気圧という小さな圧力しか加えられないため、樹脂が炭素繊維に均一に染み渡らないのである。

「付着が弱いということは強度が落ちてしまうということです。製造コストを抑えることができても強度が弱い材料では意味がない。そこで、樹脂の注入口や注入順序を変えたり、さらに中に詰め物をしてみたりと試行錯誤を繰り返し改良に改良を重ねてきました。その結果、ようやくベストな方法を見つけることに成功した」。

念願だった低コストの製造法の確立。従来のCFRPに比べ圧倒的に優位な材料ができたわけだが、実はここまでは序章に過ぎない。厳格な安全性を問われる旅客機ではいくつもの試験をクリアしてはじめて実用化となる。
「基本となるのは、現在旅客機で使われているプリプレグを用いたCFPRと同等レベルの強度と剛性を得ることです。バータム法で成形したCFRPの一部を取り出し、圧をかけたり引っ張ったりすることで強度試験を繰り返していったわけですが、その試験である困難を抱えていました」。

素材の強度や剛性は主に「面内」と「面外」の検査がある。金属は見た目の変化と内部の変化に大きな差はないが、CFRPなどの複合材は、外部から見て異常がなくとも内部が損傷し、そこを起点として大きな破壊につながることがあるため、面内と面外の両方の検査が必要になる。

旅客機だけでなく他産業にも広げたい
2008年4月、JAXAの調布航空宇宙センターで強度試験がおこなわれていた。厚さわずか1mm、B4ほどの大きさの黒い板。それはJAXAが開発したバータム法でできた低コストのCFRPだった。黒い板には白いスプレーでまだら模様が加えられ、2t、3t、4tと圧が加えられ、その都度2台のARAMISで板を撮影し、最終的に10tまで圧がかけられた。板はわずかに歪んだものの破壊されることなく耐えていた。データはカラーマップに変換され、時系列に並べることで素材が歪んでいく様子がわかる。

「強度が足りなければさらに成形方法を工夫するなどして、現在ではプリプレグで成形したものとほぼ同等の強度が出るようになりました。ただCFRPのような複合材の場合、場所によって強度などにバラつきが出ることがあるため、どの場所でも同じ値を出すことがとても重要です。多少強度が落ちたとしても均一の素材ならば、設計の工夫によって強度不足を補え、実用化できるわけです」。JAXAではベンチャー企業とのコラボレーションにより、すでに6m級の実物大の主翼を完成させ、いくつかの強度試験もおこなわれている。製造した主翼はすでに3本というから、ミッションも佳境に入りつつある。

「航空機を製造するメーカーでもバータム法を改良して素材開発に着手しているため、開発した製造法が採用されるかはまだ未知数です。この製造法は大がかりな設備がいらないので中小企業でも容易に導入できる。自動車は重量が半分になれば燃費も半分になるといわれ、風力発電も羽根が軽くなれば発電容量を増やすことができる。活用できる用途の裾野はとても広いのです」旅客機産業だけでなく、日本の産業の未来につながる1つの素材。その研究が、今日も続いている。

自転車の軽量化を目指しているわれわれにとって、利用できる環境が整うことを期待している。フレームのような剛性のもの以外にも、ブレーキレバーとシフターを組み込んだハンドルバーとかサドル、タイヤのようなものとかコンポの軽量化したものも作れるようになり、気軽に入手できる価格帯のものが製品として現れてくることを願いたいし、我々の手で作ってみる価値もあると思う。

 

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